【日高の意地VS安平の意思】今年の牡馬クラシック戦線が「マキバオー」や「ウマ娘」もビックリなくらいドラマチックになってきた。
秋競馬の開幕と同時に、クラシック最後の一冠に
向けてのトライアルレースも開始。菊花賞トライアルも
今週はセントライト記念セントライト記念が行われます。
春のクラシック戦線は、まず一冠目の皐月賞を
エポカドーロが、続く東京優駿をワグネリアンが
制しましたが、改めて見返してみると、
この2頭は競馬史に残るドラマチックなライバルに
なりそうな予感がしてなりません。
◆「三冠馬の息子」同士の威信を賭けた戦い
エポカドーロの父オルフェーヴル、ワグネリアンの
父ディープインパクト、それぞれ言うまでもなく日本競馬史に
燦然と輝く三冠馬ですが、異なる三冠馬の産駒が春の
クラシックを分け合うのは今年が史上初。
我々は実に贅沢な対決を現在進行形で観ているわけですな。
◆日高のプライドを一身に背負うエポカドーロ
エポカドーロの生産者は新ひだか町の田上徹牧場。
近年、社台グループの躍進に押される日高産の
馬の中から登場した本馬。オーナーも日高の牧場の
共同出資により設立されたユニオンオーナーズクラブ。
初年度募集のサンドピアリスが最低人気でエリザベス
女王杯を制したのは有名ですが、それ以降はサンビスタまで
JRAのGⅠ制覇はなく、牡馬のクラシック戦線については
97年にヒダカブライアンが有力候補に名前を連ねたくらい。
そんな中で設立32年目にして皐月賞を制した
エポカドーロは、間違いなく「日高の星」なのです。
◆「意志あるところに道あり」ワグネリアン
かたや近年飛ぶ鳥を落とす勢いの安平町・ノーザンファームで
生産されたワグネリアン。父ディープインパクト、母ミスアンコール、
母父キングカメハメハ、母母ブロードアピールいずれも金子真人氏
所有の馬による配合で、いわば「リアルウイニングポスト」を
体現する本馬は、早くからクラシック候補と目されていました。
弥生賞2着→皐月賞4着の後、ダービーに駒を進めた
ワグネリアンに降りかかった第一の悲劇、それは
幼少期よりノーザンファームで共に育った幼なじみ、
オブセッションの死でした。
その悲劇から数日後、8枠17番の決して有利とはいえない
枠番から先団に取りついて、最後はエポカドーロを
わずかに差し切り東京優駿制覇。
鞍上・福永祐一騎手にとっては1998年の
キングヘイローでの初騎乗(14着)から20年、ダービーを
勝つことなく志半ばでターフを去った父・洋一氏の騎手
デビュー(1968年)から丸50年、親子2代にわたるまるで
大河ドラマのような悲願達成となりました。
夏を越えて秋初戦に備えるワグネリアンに、さらなる悲劇が
遅いかかります。9月6日に発生した北海道胆振東部地震で、
母ミスアンコールがノーザンファーム繋養場で唯一の
犠牲となってしまったのです。
馬自身に肉親の死がわかるのかどうかはわかりませんが、
ノーザンファーム関係者にとっては悲しい出来事が
続いたわけで、それを乗り越えるための勝利が欲しいのは
恐らく間違いのないところ。まさに「意志あるところに
道ありを体現するようなワグネリアンの活躍が期待されます。
◆そして現れる「第三の男」候補たち
エポカドーロとワグネリアンのほかにも、ダービー
惜敗から復帰戦の新潟記念を制し、オブセッションとは
育成厩舎で同厩だった「真の幼なじみ」ブラストワンピースや、
ダービー馬レイデオロを兄に持ちながら、両ひざの骨折で
同期から出遅れたレイエンダの捲土重来など、見所の
多くあるこの秋の牡馬クラシック戦線。
「事実は小説よりも奇なり」のドラマを楽しみましょう!!